インプラントの固定様式について最新のエビデンス
スクリューあるいはセメント固定式インプラント上部構造の臨床成績
1 過去に報告されたシステマティックレビューにおいては、スクリュー固定式とセメント固定式では、インプラントあるいは上部構造の残存率に有意な差はなかった。
2 補綴装置の技術的な合併症は天然歯の場合に比べてインプラントではより発生しやすい。その多くは前装部の破折、スクリューの緩み、維持の喪失である。
生物学的合併症では、インプラント周囲炎と骨吸収がより高い頻度で発生する。
3 生物学的な合併症(2mm以上の骨吸収)はセメント固定式に多く見られ、技術的な合併症はスクリュー固定式に多かった。リトリーバビリティーに優れているため、
スクリュー固定式が好ましい。
4 単冠上部構造における失敗
セメント固定式の失敗率(0.74)、スクリュー固定式の失敗率(1.85)に有意差はなかった。5年残存率は、セメント固定式で96.37%、スクリュー固定式で91.16%で有意差はなかった。
5 固定性ブリッジとカンチレバー
セメント固定式の失敗率(1.11)、スクリュー固定式の失敗率(1.78)に有意差はなかった。5年残存率は、セメント固定式で94.60%、スクリュー固定式で91.48%で有意差はなかった。
6 材料の種類による失敗
a) アバットメント材料
スクリュー固定式、セメント固定式補綴装置に使用されたチタンアバットメント、金合金アバットメントならびにセラミックアバットメントの失敗率に有意な差は認めなかった。
b)補綴装置の材料
セメント固定式補綴装置においては、オールセラミック修復(0.88)の方が、メタル修復(0.37)よりも優位に失敗率が高く、スクリュー固定式では材料間に有意な差は
認めなかった。
c)セメント材料
失敗率はセメントの種類(リン酸)セメント、グラスアイオノマーセメント、レジンセメントならびにユージノールセメント)の違いで有意な差は認めなかった。
7 合併症
- 技術的合併症
スクリュー固定式において、咬合面スクリューの緩みの推定発生率は1.76、充填材料の喪失については0.81となった。
セメント固定式において、セメントの種類と維持力の喪失の間に有意な差を認めた。
- 生物学的合併症
セメント固定式ならびにスクリュー固定式における生物学的合併症の比較検討においては、瘻孔/排膿において統計学的に有意な差が認められ、
セメント固定式における発生率が高かった。
8 考察
- スクリュー固定式の利点
リトリーバビリティが良好である 顎間スペースが少なくてすむ
メンテナンス時、修理時、外科介入時に外しやすい
- スクリュー固定式の欠点
精密さが要求される
アクセスホールの配置を考慮するため、補綴主導の考えに基づきインプラントの配置を行う。
- セメント固定式の利点
スクリュー固定式と比べて技工が困難ではないため、費用は低くなる。
インプラントポジションのずれ、パッシブフィットの補償、審美性の向上、咬合のコントロールが容易
- セメント固定式の欠点
インプラント周囲炎や周囲粘膜炎などのインプラント周囲疾患に関連がある余剰セメントを容易に除去できない
これらの結果より、当院では可能な限りスクリュー固定のインプラント治療を行っております。